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北村 智; 田中 淳; 井上 雅好*
Genes and Genetic Systems, 80(4), p.251 - 260, 2005/08
被引用回数:10 パーセンタイル:20.08(Biochemistry & Molecular Biology)タバコ属植物における倍数化の経緯を探るため、4倍体野生タバコ種において、高等生物に必須の遺伝子である5S rDNAのスペーサー領域を単離しシーケンス解析した。既に解析済みであった2倍体タバコ種におけるスペーサー配列と比較することにより、2倍体種と4倍体種からなる複数のグループが形成された。また5S rDNAの座乗染色体を調べたところ、グループ内の種は類似した染色体に5S rDNAが位置することがわかった。これらの結果から、同一グループに分類された倍数性の異なる種は、5S rDNAを基準にすると、非常に系統学的に近い関係にあると言える。この結果が、5S rDNAという一つの遺伝子だけでなくゲノム全体に関しても言えるかどうかを調査するために、GISHによるゲノムレベルの解析を行った。その結果、シーケンス解析で認められたグループは、ゲノムレベルでも非常に近縁関係にあることがわかった。
横田 裕一郎; 鹿園 直哉; 田中 淳; 長谷 純宏; 舟山 知夫; 和田 成一; 井上 雅好*
Radiation Research, 163(5), p.520 - 525, 2005/05
被引用回数:20 パーセンタイル:50.54(Biology)一般的に高等植物は哺乳動物よりも放射線に強い。高等植物の放射線耐性機構を探索するために、タバコBY-2細胞及びその対照としてチャイニーズハムスターCHO-K1細胞に線を照射し、パルスフィールドゲル電気泳動法によりDNA2本鎖切断(DSB)を定量した。タバコBY-2細胞におけるDSB生成量(2.00.1DSBs GbpGy)はCHO-K1細胞のわずか1/3であり、一方で、平均致死線量の線照射による細胞あたりのDSB生成量は、タバコBY-2細胞(263.213.2)ではCHO-K1細胞より5倍多かった。これらの結果は、タバコBY-2細胞で認められた放射線耐性の原因として、DNA損傷が少ないばかりでなく、DNA損傷が効果的に修復されることを示唆している。
横田 裕一郎; 長谷 純宏; 鹿園 直哉; 田中 淳; 井上 雅好*
International Journal of Radiation Biology, 79(8), p.681 - 685, 2003/08
被引用回数:21 パーセンタイル:78.43(Biology)イオンビーム照射した植物単細胞での放射線感受性と生物学的効果比(RBE)の線エネルギー付与(LET)依存性を調査するために、タバコ(BY-2)単細胞にカーボンイオン(78.6-309keV/m)及び線(0.2keV/m)を照射した。照射2週間後、16細胞以上からなるコロニーを形成した照射細胞を生存細胞として計数した。生存割合を単一ヒット多標的理論を用いて近似した。生存割合を0.1に減少させる線量(D)は線で47.2Gy、カーボンイオンで10.5から12.6Gyであった。ほ乳類細胞に比べてタバコ単細胞の放射線感受性は5から10倍低かったが、放射線感受性と高い相関を持つパラメータである染色体当たりのDNAサイズは両者の間でほぼ同じであった。Dに基づくRBEは247keV/mでピークに達した。タバコ単細胞におけるカーボンイオンのDに基づくRBEピークは他の生物において認められているよりも高LETで認められた。
北村 智; 井上 雅好*; 鹿園 直哉; 田中 淳
Theoretical and Applied Genetics, 103(5), p.678 - 686, 2001/10
被引用回数:46 パーセンタイル:80.8(Agronomy)タバコ属には染色体数の異なる多くの種が存在するため、その系統関係は極めて複雑であると考えられている。本研究では、18,20,24及び48本の染色体をもつタバコ野生種の系統類縁関係を明らかにするために、5SリボソームRNA遺伝子(5S rDNA)のスペーサー領域の塩基配列を解析した。18,20及び24本の染色体をもつ種においては、一種類の5S rDNAユニットが検出された。一方、48本の染色体をもつ種においては、二種類の5S rDNAユニットが検出され、その塩基配列から、これらの種が雑種由来の複二倍体であることがわかった。それぞれの種から単離した5S rDNA配列を比較することにより、塩基置換の頻度に基づいて3つの領域に分けることができた。5S rDNAのスペーサー領域の塩基置換パターンに基づいて系統分類学的解析を行った。幾つかの異なる理論法を適用することにより系統樹を作製し、すべてにおいて類似した結果が得られた。本研究で示された系統関係は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により明らかにした5S rDNAの染色体上の分布パターンと一致していただけでなく、植物の外部形態などに基づいた現行のタバコ属植物の分類と矛盾のないものであった。
下野 和彦*; 鹿園 直哉; 井上 雅好*; 田中 淳; 渡辺 宏
Radiation and Environmental Biophysics, 40(3), p.221 - 225, 2001/09
被引用回数:8 パーセンタイル:28.35(Biology)タバコ根端細胞に対するカーボンイオン分割照射効果について調べた。2MeV電子線に対する220MeVカーボンイオンの単一照射の生物学的効果比(RBE)は、分裂指数が15,染色体異常頻度が10であった。カーボンイオン0.5Gyを二回,1時間,2時間,6時間間隔で照射しても1Gyの単一照射と染色体異常頻度に差がみられなかった。しかしながら、電子線においては、5Gyを2時間間隔で照射した場合、10Gy単一照射に比べて染色体異常頻度が低下することが見いだされた。このことは、一回目の照射によって「正確な」修復が誘導・活性化されたことを示唆している。染色体異常のスペクトルが単一照射と分割照射で変わらなかったことから、この電子線における染色体異常頻度の低下はある特定の型の異常が原因ではないと考えられる。カーボンイオンの分割照射によって染色体異常頻度が下がらないことは一回目の照射によって「正確な」修復が誘導・活性化されない、もしくはカーボンイオンによる損傷が効率的に修復されないことが原因と考えられる。
浜田 健太郎*; 井上 雅好*; 田中 淳; 渡辺 宏
Plant Biotechnology, 18(4), p.251 - 257, 2001/04
イオンビーム照射とタバコ花粉の培養系利用によって得られたポテトウィルスYの耐病性半数体の染色体倍化を行うため、髄組織の培養を試みた。その結果、35個体の植物を得ることができ、順化を行った。それらの染色体数は22から96本まで変化していたが、16個体では、正常な48本の染色体を保持していた。また、これらの植物体は自家受粉により稔性種子を作り出せることができた。さらに、後代でポテトウィルスYの接種試験を行ったところ、耐性と感受性の植物体が混在していたものの、半数体で耐病性であった約50%が倍化植物体でも耐性であることがわかった。
渡辺 宏
ブレインテクノニュース, (68), 3 Pages, 1998/07
イオンビームの深度制御性を生かして、タバコ花粉をイオンの打込み深度を変えて照射すると、水溶液に浸漬したときに花粉外殻が開裂するという現象を発見した。従来法では花粉外殻を破壊することは困難であり、また線や電子線でも起こりにくいイオン照射に特異的な現象である。このような新現象をもとにして、照射花粉を標識遺伝子を含む溶液に浸漬することによって、花粉に遺伝子が導入され、標識遺伝子の発現が顕著に増大することが分かった。新規の遺伝子導入法として開発を進めている現状を紹介した。